ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

二次創作

小田原

Takayuki Miki 小田原の町まち見えて空に凧 『小津安二郎全日記』

春眠

hsohei いくらねてもね足りない 頭の調子も極めて悪い 春は仕事にどうも悪い 『小津安二郎全日記』

タクシー!

gullevek 《深川までいくらで行く》 《十銭位負けたって仕方がないでしょう》下りるとき 《六十銭やらうか》 《下さい》 《十銭位よけい貰ったって仕方がないだらう》 『小津安二郎全日記』

春曇

Tjarko Busink お天気極めてにえ切らず お天道様に暇し油など差し上げたし 『小津安二郎全日記』 ひまし油 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%81%BE%E3%81%97%E6%B2%B9

ひな祭り

なつかしや 雪洞(ぼんぼり)くらき雛の顔 春の夜や 五人囃子の それぞれに 『小津安二郎全日記』 写真はわたしのお雛様です。 この女雛、ちょっとキツそうなしっかり者の面立ち。 いっぽう男雛は、お坊ちゃん育ちのような幼い顔をしています。 意図したわけ…

ぬかるみに

梅が香低う流れけり Mirai Takahashi 『小津安二郎全日記』

余寒

埋火(うずみび)をかきあつめつゝ余寒かな torne 『小津安二郎全日記』

『路線バスより』小津安二郎

工藤隆蔵 東京駅から宵のうちに深川に永代を渡って帰るときいつも侘びしくなるのは何故か 永代の橋梁から見た浅野セメントの外廓 川に向かってたった亜鉛葺の倉庫つづいて町に入ってからの 小さなメリヤス屋 化粧品店 印刷屋 ラヂオ屋 ガレーヂーこんなとき…

『甘党風物詩』岸田國士

Keith Davenport 日本でシユウ・クリイムと呼んでゐる菓子は、英国へ行つても仏蘭西へ行つてもその名前では通用しない。 英吉利(イギリス)でシユウ・クリイムを持つて来いと云つたら、靴墨を持つて来た といふ落噺(おとしばなし)もできてゐるくらゐだ。 僕の…

『冬の逗子』櫻間中庸

4563_pic わびしさのつもれば獨り訪ね來て悲しき海の冬を聞くなり

「ああしんど」 池田蕉園

よほど古いお話で御座います。 私の祖父の子供の時分に居りました「三」(さん)という猫の話で御座います。 三毛だったそうです。何でも、その祖父の話に、おばあさんがお嫁に来る時に――祖父のお母さんで しょう――泉州堺(せんしゅうさかい)から連れて来た猫…

『冬』リルケ

Roman Boed ……むかしの冬の方が私は好きだ。 人は冬を少し怖がつてゐた、それほど冬は猛烈で手きびしかつた。 人はわが家に歸るために、いささか勇氣を奮つて、冬を冒して行つたものだ。 さうして私たちの冬の慰めとなつてゐた、 すばらしい焚火は、力づよく…

聲曲(もののね)

われはきく、よもすがら、わが胸の上(うへ)に、君眠る時、吾は聽く、夜の靜寂(しづけき)に、 滴(したゝり)の落つるを將(はた)、落つるを。 常にかつ近み、かつ遠み、絶間(たえま)なく落つるをきく、夜もすがら、君眠る時、君眠る時、われひとりし…

『湯治客』小津安二郎

David McKelvey 湯河原投宿二階から玄関につく湯治の客を見る女あり 狐のえり巻きをなす 池忠曰くチェっ! 狸が狐しょってゐやがら 『小津安二郎全日記』 池忠:脚本家 池田忠雄 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E5%BF%A0%E9%9B%84_(%E8…

宮沢賢治『霙』

Jonatan Pie 今宵南の風吹けば 霙(みぞれ)となりて窓うてる その黒暗のかなたより あやしき鐘の声すなり 雪をのせたる屋根屋根や 黒き林のかなたより かつては聞かぬその鐘の いとあざけくもひゞきくる そはかの松の並木なる 円通寺より鳴るらんか はた飯豊…

『人を食った話』芥川龍之介

金沢の方言によれば「うまさうな」と云ふのは「肥った」と云ふことである。 例へば肥つた人を見ると、あの人はうまさうな人だなどとも云ふらしい。 この方言は一寸食人種の使ふ言葉じみてゐて愉快である。 僕はこの方言を思ひ出すたびに、自然と僕の友達を食…

『しるこ』芥川龍之介

震災以來の東京は梅園や松村以外には「しるこ」屋らしい「しるこ」屋は跡を絶つてしまつた。その代はりにどこもカツフエだらけである。 僕等はもう廣小路の「常盤(ときわ)」にあの椀わんになみなみと盛つた「おきな」を味はふことは出來ない。これは僕等下…

北大路魯山人『雑煮』

David Z. いったいお雑煮は、子供の時分から食べ慣れた故郷の地方色あるやり方が、 いちばん趣味的で意義がある。 かといって、強いてそうせねばならぬという理由はないのだから、各自の好みに任せてよい。 わたしの経験からいうと、雑煮の中を賑々しくする…

『小寒』小津安二郎

寒鯉や たらひの中に昼の月 Sarah Horigan 小津安二郎全日記 昭和八年 一月七日

『小僧と牡丹餅』三遊亭円朝

主「さだ吉や。 定「へえお呼びなさいましたか。 主「此の手紙を矢部の処へ持つて参ゐれ、 たゞ置いて来れば宜いんだよ返事は入らないから、さア使ひ賃に 牡丹餅(ぼたもち)を遣らう。 小「有りがたう存じます。 主「其処で食べるなよ、帰へつて来てから食…

『新らしき年の春』小津安二郎

halfrain 信濃の山近き雪ふかぶかとしたる宿の炬燵にうつらうつらと新らしき年の春を迎ふ陽の光障子に明るう雪どけの音かすかなりわが心すずろに ひねもすは永くちんちんと鉄瓶の湯はたぎりて安倍川の濁りし湯をなつかしむ地酒いとつめとう またたのしくもあ…

櫻間中庸『葉山』

Naoya Fujii なぎさ打つ波のかけらのほの見えて葉山のはまに日は暮れるらし 櫻間中庸『冬の逗子』 本年中はありがとうございました。 みなさまには良き平安な新年をお迎えください。

『冬至』櫻間中庸

あをいタイルの浴槽にひたつてゐる。外は武藏野の風であらうにこの落ちついた心はふるさとを想つてゐる。ぷち――ぷちゆぶねのあちこちに月のやうに浮んでゐる橙の實をそつと下から押へる。兩手の指で押へると種子はあわてゝはねる。いゝ音だ。冬至。ふるさと…

『冬の街』櫻間中庸

byronv2 賣店の女の顏の明るさはアスフアルト敷くこの街の顏

『逗子海岸より』櫻間中庸

濱に出て砂にころべは夕さりて 町に歸ればしみじみと、思ひ出ぬるふるさとのこと。 写真 ねこじ 夕燒がまつ赤だ 故郷の臺山の夕やけを思ひ出す。いつもは見えない富士の頂の鋸齒が一つ一つくつきりとまつかな空と眞白な頂との境を見せて何とも云へない莊巖さ…

『バナナ賣り』櫻間中庸

たたき賣るバナナ屋の聲寒寒と宵のしゞまを破りて流る Adam Cohn

『行倒の商売』三遊亭円朝

Miles Bader 是れは当今(たうこん)では出来ませぬが、 昔時(むかし)は行倒(ゆきだふ)れを商売にしてゐた者があります。無闇(むやみ)に家(うち)の前へ打倒(ぶつた)ふれるから「まアおまへ何所(どこ)かへ行つてくれ。 乞「何どうもわたくしは腹…

佐藤春夫『冬の日の幻想』

Lamorgans 霜ぐもる十二月の空は 干ものやくにほひにむせび 豆腐やのちゃるめら聞けば 火を吹いておこすこの男の目に ふと どこかの 見たこともない田舎町の場末の 古道具屋の四十女房がその孕(はら)みすがたで 釣ランプをともすのだ かかるゆふべの積み累…

終秋

Bastetia 秋雨にほどよくさめし番茶かな 小津安二郎全日記

なべ

たてきりし硝子障子や鮟鱇鍋 sasaki0124 小津安二郎全日記