ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

小説

「細雪」を自でゆく女たち

お題「我が家の本棚」 母の妹たちです。 70代だろうと思うんですが、本当に若く綺麗です。 独身のせいもありますが、よく働き、今では引退して、 ショッピング、スポーツジム通い、海外旅行と、 生活を謳歌しています。 羨ましい限りです。 今日姉妹は、相撲…

メグレ警視

『メグレ罠を張る』パリの街を震撼させる、連続切り裂き魔事件。メグレは街全体に、大掛かりな罠を仕掛け、犯人を追い詰めようとするのですが……。 GYAO!で9/3(土)まで無料視聴できます。日本語字幕付き ローワン・アトキンソンのメグレ、良いですね〜。ミ…

小説『ドトールにたむろする女たち』

(気分が悪くなる表現があります) 田舎町の駅前にある小ぶりな商業施設。 そこに入っているドトール・コーヒー。 何故か大きな街のスタバより混み合っている。 一体どんな客たちが何をしに、此処に集まってくるのか? 店の真ん中にある丸テーブル。女たちが付…

小説『年がら年中の洋品店』

今週のお題「好きな街」 その洋品店は年がら年中やっている。休んだのを見たことがない。経営者の社長夫妻は出勤しない。いつもパートの主婦たちに丸投げだ。彼女たちの日々の奮闘で保っている。日曜休日も決して休まない。年がら年中開店して、年がら年中セ…

小説『カイコ』(注意:虫出演中)

お題「わたしの癒やし」 ミイちゃんは、困っていました。 先生になんて言おう? 困りすぎて泣いてしまいそうでした。 せっかく持ち帰ったあの子を食べられてしまうなんて!みんなのアイドルのあの子。 ミイちゃんの学年は修学旅行で、かつて養蚕業の盛んだっ…

小説『ほねおり』

お題「ゆっくり見たい映画」 「Sさん、妙な話なんだ」 支配人は困ったような顔をしてS氏を呼び止めた。 「映画を一本上映してくれってんだが」 「いいっすよ」 「その村が、地図を見てもない」 何でも昼前一本の電話がかかってきて、山奥の村で映画を上映…

小説『真夏の怪異』

今週のお題「夏休み」 お祖父さんの七回忌、お寺さんに来てもらった時のことです。兄弟姉妹が集まり、厳粛な雰囲気の中法要が始まりました。お坊さんがなにやら難しいお経を唱え、木魚を叩きました。すると何処からともなく奇怪な声が… 「ニャ~」 またお坊…

小説『Tree』

今週のお題「夏休み」 この夏の始め、庭の一本の木をめぐって家族がもめた。 庭の片隅にいつの間にか鳥が種子を運び、小さな若木が育ったかと思ったら、あっという間に見上げるほどに成長した。 名もなき木。今年はなぜか大量に花をつけ、それが真下に停めて…

小説『夏休みの思い出』

今週のお題「夏休み」 みんみんじわじわ 熱い空気 小学生のわたし 両親 兄弟 友人家族 川遊びに興じる子どもたち。 大人たちが、河原を大きめの石でせき止め始める。 あっというまに手作りのダムが出来上がる。 流れてきた鮎が、おもしろいほど次々とワナに…

小説『曲がったスプーン 2』

あれから何年も経った。 ふとテレビをつけると、ユリ・ゲラーが映っている。(この人、まだこんなことやってんだ~)と思いつつ、見るともなく見ていた。ユリがいくつかの図形を示し、「この中からひとつ選び、今から念を送ります」と言う。 「送りました」…

小説『曲がったスプーン 1』

小学生の時、一大超能力ブームが巻き起こった 。テレビで連日スプーン曲げの映像が流れ、雑誌は特集を組んだ。休み時間に同級生たちが、あんなのは嘘だ、インチキだと騒いでいた。 ボクは目立ちたい一心で曲がったスプーンなら、ボクもひとつ持ってる。と、…

小説『梅雨の晴れ間』

彼女洗濯物を落とすぞ 写真 工藤隆蔵 「あ」思う間もなく、タオルを落とした。ベランダのコンクリに。「またやった」どうしてこう不器用なんだろう。いつもこのタイミングで、洗濯したものを落っことす。(いつもこのタイミングで男が逃げていく)落っことす…

小説『ともに歩めと言われた』

『ひつじ村の兄弟』 ookumaneko127.hatenablog.com 続きの創作小説。(ネタバレあり注意) あの映画のあの後は一体どうなったのだろう?気になりすぎて眠れない。そうだ、自分で書いてしまえ。あの時、あの吹雪の中、互いの体温を分け合った兄弟はそのまま誰…

小説『夜の踊り』

寺田寅彦『難破船遊び』 ookumaneko127.hatenablog.com 続きの創作小説 次の日から、何も変わることはなかったが、朝食に異変が起きた。 David McKelbey 普段は塩味の麺麭(パン)に、珈琲が私たちの朝の食事の全てだ。 が、その朝は甘く煮詰めた林檎が皿に…

小説『あきみさん』

お母さん、バスにあきみさんが乗っていたよ。すっかり人相が変わってわからなかった。優先席に座ってたよ。デパートの紙袋両脇に二つも抱えて。相変わらずだね。最初は分からなかったんだけど、降りるときに、バス停にご主人が待っていて分かった。何年も前…

小説『むしょうの愛』

みなこは、恋多き女。この前イタズラに、今まで愛した男の数を数えてみようかと思った。 だが、とても手と足の指では、足りない。 デスクの鉛筆たての中に放り込んだままの筆記具を、片っ端から数えたが、まだ足りない。 『あら、こんなに多かった?……』と思…

小説『バクダンが消えた日』

Mちゃんはご近所の爆弾。 それもメガトン級、犬バクダンだ。Mちゃんは町内会に入っていない。 『とっくの昔に町内会長と喧嘩している』 と、母が教えてくれた。それもそのはず。家の周辺は家からはみ出したゴミだらけ。いわゆるゴミ屋敷。そして、その家の…

小説『砂漠の犬』

大きな犬が飛び込んで来た。犬はまっしぐらに疾走し、男をめがけて襲いかかった。警官が「犬を離せ!」と銃を構え怒鳴った。 大きく賢く美しい犬がいた。犬には、似合いの寡黙な飼い主がいた。飼い主の男と犬は砂漠へと出掛けた。灼熱の太陽が鳴りを潜め、小…

小説『リッパな人』

二人の中年の女が道端でばったりと遭遇した。「あら、お久しぶり」 そう言って、主婦Aはギョッとした。イイトコのヒト(もう一人の女)は、多少迷惑そうにしながら、控えめな挨拶をした。その姿は、主婦Aが知っているかつての姿とはかけ離れていた。昔の華や…

小説『一年生』

みいしゃはこの春一年生になった。通算して、四回目の新生活スタートだ。なんだか初々しい。なんだかワクワクする。だけど現実は甘くなかった。みいしゃの人生で初めて、アルバイトというものをしてみた。友達といっしょに派遣登録をし、自分の口座も作った…

小説『教習所にて 2』

「おい誰だよ!このヒトにハンドル握らせたの!」七曲署ボス風の教官が叫んだ。 またやってしまった。その日の路上教習の出来は全くひどかった。前方にいるバスを追い越すことが出来ず、あたふたしているうちに、後続車がどんどん進路変更してダットのごとく…

小説『どこにでもいる』

「まったく、おしゃべり婆さんだよ!」 姑が不愉快そうに言った。向こう隣のGさんの奥さんだ。ことの発端は家族のなにげない会話。 「今日バスに乗ったらGさんの奥さんがいたよ」 「おや、昨日も駅のバス停で近所の奥さんとしゃべっていた」 「この間も歩い…

小説『母親の遺伝子』

「あんた何やってるの?ちゃんと見なさい!」 とある眼科の検査室、怒声が響いた。検査師は 『外野がうるさい』 と思いつつ、検査を続けた。画学生が使う固形水彩絵の具ような色とりどりの色見本。微妙な色調は規則的に美しく並べられている。一見病院の検査…

小説『教習所にて』

「わたしあの先生苦手なんですー。怖くって、緊張しちゃうんですー」 ぽっちゃりした女の子が言った。 中年の女が返した。 「あの神経質そうな若い先生ね。怖いよねー。リラックスできる先生に当たると、ラッキーって、思っちゃう」 「わたしもおじさんの先…

小説『目』

「ああ、目が見えないよう。」 ある女性が嘆いている。 嫁が慰める。 「昨日は良く見えるって言っていたじゃない。」 「術語一ヶ月は安定しないって、手術の説明書にあったでしょ。」 姑は白内障の手術をしたばかり。「痛いよ。痛いよ。今日はいたいよ。」 …

小説『友情』

不思議な夢を見た。友人と映画を観ている時だ。 いや、結局のところ、独りで見た夢だった。 まったく別々な場所に生まれ、出会い友人になったわたしとA。 彼女は特異な育ち方をしていた。 幼いころ、あの蟻の町のゼノ修道士の幼稚園に通っていたそうだ。 彼…

小説『ブラジルのおばちゃん』5 あきらちゃん

母がそう呼ぶ人は、雅ちゃんのお父さんだ。むかし。母の親友ブラジルのおばちゃんと母と、あきらちゃんはお友達同士だった。美しく華やかなブラジルのおばちゃんは娘時代男性にモテた。あきらちゃんも、ご多分にもれず、おばちゃんのことが好きだったらしい…

小説『ブラジルのおばちゃん』4 いじわる

「決められた下校路を通って帰りましょう。」 担任も厳しい顔で私を見ている。当時、日本で初めて、子どもがらみの忌まわしい事件が起きた。親や教育関係者が過敏になり始めた矢先のことだった。雅ちゃんが「それ見たことか」と、勢いづいて続ける。 「ちい…

小説『ブラジルのおばちゃん』3 みやびちゃん

雅ちゃんは頭が良くて学級委員で、スポーツも出来て、華やかで。 そして、私の何もかもが気に入らない。 勉強が苦手だが絵が上手。日々、同級生たちを笑わせることに心血を注ぎ、 人気だけはクラス一だった私を、心底憎んでいた。 何かと、感情的になって突…

小説『ブラジルのおばちゃん』2 わたしの母

教室の戸が開いて、一人の婦人が入って来た。 担任にあれほど注意されているのに、みんな一斉にそちらを振り返る。 ここまではどの親が入って来てもそうなのだが……、ここからが違った。子どもたちはみな一様にざわめき、授業がしばし中断された。 「だれのお…