ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

室生犀星

室生犀星『春分』

Sangudo うすければ青くぎんいろにさくらも紅く咲くなみに三月こな雪ふりしきる雪かきよせて手にとれば手にとるひまに消えにけりなにを哀しと言ひうるものぞ君が朱なるてぶくろに雪もうすらにとけゆけり 室生犀星『三月』(抒情小曲集) 春分の日、冬の寒さ…

『茶』室生犀星

Christian Kaden 父は茶が好きであった。奥庭を覆うている欅の新しい若葉の影が、湿った苔の上に揺れるのを眺めながら、私はよく父と小さい茶の炉を囲んだものであった。夏の暑い日中でも私は茶の炉に父と一緒に坐っていると、茶釜の澄んだ奥深い謹しみ深い…

室生犀星『山』

Go uryu 山は静止す。 そのさまざまなるものに富み胎めるかを見よ。 真に生けるものの静けさを聴けよ。 室生犀星『抒情小曲集』序

室生犀星『抒情小曲集』自序

Bong Grit 過ぎし日の愛人をおもふこと真に雪の下の若草を思ふに似たりとつげよ。

室生犀星『忘春詩集』

halfrain この忘春といふ美しい織物の裏地をさし覗くやうな文字のひびきからして、 しつくりと私の心からゑぐり出したもののやうに思へる。私ばかりではなく誰人でも忘春の心があわただしく胸を衝くことがあるかも知れない。それだのに私は私らしく人一倍に…

室生犀星『かもめ』

naitokz かもめかもめ去りゆくかもめかくもさみしく口ずさみ渚はてなくつたひゆくかもめかもめ入日のかたにぬれそぼちぴよろとなくはかもめどりあはれみやこをのがれきて海のなぎさをつたひゆく

室生犀星『さくら』

Noelas すゐすゐたる桜なり伸びて四月をゆめむ桜なりすべては水のひびきなり四阿屋の枯れ芝は哀しかれども花園になんの種子なりしぞしきりに芽吹ききそよりもなほ萌えづるげ街のをとめの素足光らし風に砥がれて光るさくらなり 室生犀星『前橋公園』 昨日今日…