ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

中原中也

中原中也 山羊の詩

お題「わたしの癒やし」 ArTeTeTrA いといと淡き今日の日は 雨蕭々(せうせう)と降りそそぎ 水より淡(あ)はき空気にて 林の香りすなりけり。 げに秋深き今日の日は 石の響きの如くなり。 思ひ出だにもあらぬがに まして夢などあるべきか。 まことや我は石…

『秋の日は、干物の匂ひがするよ』中原中也

今週のお題「秋の空気」 外苑の鋪道しろじろ、うちつづき、 千駄ヶ谷 森の梢のちろちろと 空を透かせて、われわれを 視守る 如し。 秋の日は、干物の匂ひがするよ 干物の、匂ひを嗅いで、うとうとと 秋蝉の鳴く声聞いて、われ睡むる 人の世の、もの事すべて…

中原中也『曇った秋』

あのやうにゆつたりと今宵ひとよを 鳴いてあかさうといふのであれば さぞや緊密な心を抱いて 猫は生存してゐるのであらう…… あのやうに悲しげに憧れに充ちて 今宵ああして鳴いてゐるのであれば なんだか私の生きてゐるといふことも まんざら無意味ではなささ…

散歩生活 中原中也

photo amira_a 私は御酒を飲んでゐた。好い気持であつた。 話相手が欲しくもある一方、ゐないこそよいのでもあつた。 其処(浅草のと或るカフェー)を出ると、月がよかつた。 電車や人や店屋の上を、雲に這入つたり出たりして、 涼しさうに、お月様は流れて…

『初夏』中原中也

扇子と香水―― 君、新聞紙を絹風呂敷には包みましたか 夕の月が風に泳ぎます アメリカの国旗とソーダ水とが 恋し始める頃ですね timothy-meinberg

中原中也 『海の詩』

Riccardo Romano 海はなが身の鏡にて、 はてなき浪の蕩揺に、 汝はなが魂 打眺む うみはながみのかがみにて はてなきなみのたゆたひに なれはながたま うちながむ ボオドレエル 『人と海』 訳 中原中也 今週のお題「海」 ookumaneko127.hatenablog.com