ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

二次創作

バーバリ

お題「好きなシリーズもの」 fb.watch 以前ハマったイギリスのテレビドラマ『ディケンジアン』ディケンズの描いた物語たちの二次創作です。二次創作と言えども、ドラマ仕立ての巧みさ、再現性の高さ、役者の上手さに感服しました。物語の中で、破産寸前の生…

『マクベス』と二次創作

お題「好きなシリーズもの」 闇が極まる冬至から、救世主降誕そして新しい年の幕開けこの一連の季節の流れにふさわしい物語を、 探してみました。『マクベス』はどうでしょうか?〈あらすじ〉戦勝にわく、とある欧州の国。王と家臣たちが祝宴を開いています…

萩原朔太郎『夢』(とらうむ)

あかるい屏風のかげにすわつて あなたのしづかな寢息をきく。 香爐のかなしい烟のやうに そこはかとたちまよふ 女性のやさしい匂ひをかんずる。 かみの毛ながきあなたのそばに 睡魔のしぜんな言葉をきく あなたはふかい眠りにおち わたしはあなたの夢をかん…

萩原朔太郎『殺人事件』

お題「好きなシリーズもの」 Jeronimoooooooo とほい空でぴすとるが鳴る。 またぴすとるが鳴る。 ああ私の探偵はガラスの衣裳をきて、 こひびとの窓からしのびこむ、 床は水晶、 ゆびとゆびとのあひだから、 まつさをの血がながれてゐる、 かなしい女の屍体…

中原中也 山羊の詩

お題「わたしの癒やし」 ArTeTeTrA いといと淡き今日の日は 雨蕭々(せうせう)と降りそそぎ 水より淡(あ)はき空気にて 林の香りすなりけり。 げに秋深き今日の日は 石の響きの如くなり。 思ひ出だにもあらぬがに まして夢などあるべきか。 まことや我は石…

国木田独歩『小春』

写真 工藤隆蔵 一年の熱去り、 気は水のごとくに澄み、 天は鏡のごとくに 磨かれ、 光と陰といよいよ明らかにして、 いよいよ映照せらるる時 (ウィリアム・ワーズワース 訳 国木田独歩) パガニーニ 24のカプリース 今週のお題「秋の空気」

萩原朔太郎『蝶を夢む』

Albert Vuvu Konde 座敷のなかで 大きなあつぼつたい翼(はね)をひろげる 蝶のちひさな 醜い顏とその長い觸手と 紙のやうにひろがる あつぼつたいつばさの重みと。 わたしは白い寢床のなかで眼をさましてゐる。 しづかにわたしは夢の記憶をたどらうとする …

『恋』宮沢賢治

Andy Simonds 草穂のかなた雲ひくき ポプラの群にかこまれて 鐘塔白き秋の館 かしこにひとの四年居て あるとき清くわらひける そのこといとゞくるほしき ookumaneko127.hatenablog.com 今週のお題「秋の空気」

萩原朔太郎『殺人事件』

jeronimoooooooo とほい空でぴすとるが鳴る。 またぴすとるが鳴る。 ああ私の探偵はガラスの衣裳をきて、 こひびとの窓からしのびこむ、 床は水晶、 ゆびとゆびとのあひだから、 まつさをの血がながれてゐる、 かなしい女の屍体のうへで、 つめたいきりぎり…

『ジキル博士とハイド氏』

flicker 『人間は完全かつ本源的に二重性格のものであることを悟った… 自分が相争っている二つの性質のどちらかであると誤りなく言えるとしても、 それはもともとわたしがその二つを兼ね備えているからにすぎない』 ヘンリー・ジキルの陳述書より 原作は言わ…

『セレナーデ 恋歌』宮沢賢治

今週のお題「秋の空気」 flicker 江釣子(えづりこ)森の右肩に 雪ぞあやしくひらめけど きみはいまさず ルナの君は見えまさず 夜をつまれし枕木黒く 群あちこちに安けれど きみはいまさず とゞろにしばし行きかへど きみはいまさず ポイントの灯はけむれど…

秋ハ夏ノ焼ケ残リサ 太宰治

今週のお題「秋の空気」 garryknight ニヒリズムですね~。 でもわたしはけっこう、 この燃え残った感、好きですよ。 芳ばしくて。笑

『秋の日は、干物の匂ひがするよ』中原中也

今週のお題「秋の空気」 外苑の鋪道しろじろ、うちつづき、 千駄ヶ谷 森の梢のちろちろと 空を透かせて、われわれを 視守る 如し。 秋の日は、干物の匂ひがするよ 干物の、匂ひを嗅いで、うとうとと 秋蝉の鳴く声聞いて、われ睡むる 人の世の、もの事すべて…

夏目漱石『野分』2

Jiuguang Wang 裕福な友人に誘われ、しぶしぶ出向いた音楽会。 きらびやかな雰囲気、華やかな人々の服装、 どちらも貧しい高柳君には馴染みのないものだ。 「三度目の拍手が、断わりもなくまた起る。 隣りの友達は人一倍けたたましい敲(たた)き方をする。 …

夏目漱石『野分』

vince42 「近頃は喜劇の面(めん)をどこかへ遺失(おと)してしまった」 「…何だか不景気な顔をしているね。どうかしたかい」 と友人に問われて。 「また新橋の先まで探しに行って、拳突(けんつく)を喰ったんじゃないか。 つまらない」 「新橋どころか、…

佐藤春夫『秋刀魚の歌』

flickr あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば伝へてよ ――男ありて 今日の夕餉(ゆうげ)に ひとり さんまを食(くら)ひて 思ひにふける と。 さんま、さんま そが上に青き蜜柑(みかん)の酸(す)をしたたらせて さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。 …

『秋』萩原朔太郎

工藤隆蔵 白雲のゆききもしげき山の端に 旅びとの群はせはしなく その脚もとの流水も しんしんめんめんと流れたり ひそかに草に手をあてて すぎ去るものをうれひいづ わがつむ花は時無草の白きなれども 花びらに光なく 見よや空には銀いろのつめたさひろごれ…

高村光太郎『晩餐』

Taidoh 暴風(しけ)をくらつた土砂ぶりの中を ぬれ鼠になつて 買つた米が一升 二十四銭五厘だ くさやの干ものを五枚 沢庵を一本 生姜の赤漬け 玉子は鳥屋(とや)から 海苔は鋼鉄をうちのべたやうな奴 薩摩あげ かつをの塩辛(しほから) 湯をたぎらして 餓…

中原中也『曇った秋』

あのやうにゆつたりと今宵ひとよを 鳴いてあかさうといふのであれば さぞや緊密な心を抱いて 猫は生存してゐるのであらう…… あのやうに悲しげに憧れに充ちて 今宵ああして鳴いてゐるのであれば なんだか私の生きてゐるといふことも まんざら無意味ではなささ…

『秋の日』萩原朔太郎

今週のお題「散策の秋」 the dreamer (swades1986.blogspot.in) ちまた、ちまたを歩むとも ちまた、ちまたに散らばへる 秋の光をいかにせむ たそがれどきの差し含(さしぐ)める 我が愁(うれひ)をばいかにせむ 捨身に思ふ我が身こそ びいどろ造りと成りて…

『秋の夢』芥川龍之介

おれは日比谷公園を歩いてゐた。 …思はず足を止めた。 行く手には二人の男が、静に竹箒を動かしながら、路上に明るく散り乱れた 鈴掛の落葉を掃いてゐる。 その鳥の巣のやうな髪と云ひ、殆んど肌も蔽はない薄墨色の破れ衣と云ひ、 或は又獣にも紛がひさうな…

空は碧いという けれども私はいう事が出来る 空はキメが細かいと

photo Rain Drop 私は彫刻家である。多分そのせいであろうが、私にとってこの世界は触覚である。触覚はいちばん幼稚な感覚だと言われているが、しかもそれだからいちばん根源的なものであると言える。彫刻はいちばん根源的な芸術である。人は五官というが、…

萩原朔太郎『閑雅な食慾』

今週のお題「わたしの課外活動」 工藤隆蔵 松林の中を歩いて あかるい氣分の 珈琲店(かふえ)をみた 遠く市街を離れたところで だれも訪づれてくるひとさへなく 松間の かくされた 追憶の 夢の中の 珈琲店である。 をとめは戀戀の羞をふくんで あけぼののや…

『饗宴』宮沢賢治

今週のお題「わたしの課外活動」 ya-itt ひとびと酸き胡瓜を噛み やゝに濁れる黄の酒の 陶の小盃に往復せり そは今日賦役に出でざりし家々より 権左エ門が集め来しなれ まこと権左エ門の眼双に赤きは 尚褐玻璃の老眼鏡をかけたるごとく 立つて宰領するこの家…

『老いる楽しみ』リルケ

今週のお題「理想の老後」 chat de Balkans 「今の世に思い出を持つ者があるだろうか。幼いころの思い出があっても、それは地中へ埋められてしまったようである。思い出へ再びたどりつくためには、たぶん年をとらなくてはならないだろう。僕は老いることを楽…

『猫性』豊島与志雄

Torne ところで、何故に猫か。 猫は飼養動物のうちで最も人間に近い生活をしている。屋内に人間と同居し、同じ食物をたべ、同じ寝具に眠る。にも拘らず、犬のような奴隷根性がない。 用があり、気が向けば、喉をならしてすり寄ってくるが、用がなく、気が向…

散歩生活 中原中也

photo amira_a 私は御酒を飲んでゐた。好い気持であつた。 話相手が欲しくもある一方、ゐないこそよいのでもあつた。 其処(浅草のと或るカフェー)を出ると、月がよかつた。 電車や人や店屋の上を、雲に這入つたり出たりして、 涼しさうに、お月様は流れて…

宮沢賢治『九月の雨』

痩せて青めるなが頬は 九月の雨に聖(きよ)くして ひとすぢ遠きこのみちを 草穂のけぶりはてもなし (青柳教諭を送る 宮沢賢治 一部編集あり photo ちいた)

セロ弾きのゴーシュ

おいらはセロ弾き、しがない楽士。 今日も今日とて動かぬ指が 弦の上もたもたと歩く。 楽長に怒られ、仲間にゃにらまれ。 赤ん坊のスプーンしごと 一朝一夕にいくものか。 トオテテ テテテイ つまりこういうことかな? あいつら毎晩手を替え品を替え、 おい…

『無学なお月様』薄田泣菫

野尻精一氏は奈良女子高等師範の校長である。 …住むでみると奈良は景色が良く、…かういう結構な土地に来て、鹿のやうに柔和で、鹿のやうに尻つ ぽの短い女学生を預つてゐる自分の身の幸福さを思ふらしかつた。野尻氏は晩飯がすむと、毎晩のやうに奈良公園へ…