ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

『秋』萩原朔太郎

 
 

白雲のゆききもしげき山の端に

 

旅びとの群はせはしなく

 

その脚もとの流水も

 

しんしんめんめんと流れたり

 

ひそかに草に手をあてて

 

すぎ去るものをうれひいづ

 

わがつむ花は時無草の白きなれども

 

花びらに光なく

 

見よや空には銀いろのつめたさひろごれり

 

あはれはるかなる湖(うみ)のこころもて

 

燕雀のうたごゑも消えゆくころほひ

 

わが身を草木の影によこたへしに

 

さやかなる野分吹き來りて

 

やさしくも、かの高きよりくすぐれり