ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

三遊亭円朝

『小僧と牡丹餅』三遊亭円朝

主「さだ吉や。 定「へえお呼びなさいましたか。 主「此の手紙を矢部の処へ持つて参ゐれ、 たゞ置いて来れば宜いんだよ返事は入らないから、さア使ひ賃に 牡丹餅(ぼたもち)を遣らう。 小「有りがたう存じます。 主「其処で食べるなよ、帰へつて来てから食…

『行倒の商売』三遊亭円朝

Miles Bader 是れは当今(たうこん)では出来ませぬが、 昔時(むかし)は行倒(ゆきだふ)れを商売にしてゐた者があります。無闇(むやみ)に家(うち)の前へ打倒(ぶつた)ふれるから「まアおまへ何所(どこ)かへ行つてくれ。 乞「何どうもわたくしは腹…

『吝嗇家(りんしょくか)』三遊亭円朝

極(ご)く吝嗇(しわ)い仁(ひと)が御座いまして、 旦那「小僧(こぞう)や。 小僧「へえ。 旦「お隣へ往つてノ蚊帳(かや)の釣手(つりて)を打つんだから 鉄槌(かなづち)を貸して下さいと然(さ)う云つて借りて来い。 小「へえ……往つて参ゐりました…

『年始まはり』

わたくしは昨年の十二月芝愛宕下(しばあたごした)桜川町(さくらがはちやう)へ越しまして、この春は初湯(はつゆ)に入りたいと存じ、つい近辺の銭湯にまゐりまして 「初湯にも洗ひのこすや臍(へそ)のあか」といふのと、 「をしげなくこぼしてはいる初…