ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

『吝嗇家(りんしょくか)』三遊亭円朝

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極(ご)く吝嗇(しわ)い仁(ひと)が御座いまして、


旦那「小僧(こぞう)や。

小僧「へえ。

旦「お隣へ往つてノ蚊帳(かや)の釣手(つりて)を打つんだから
鉄槌(かなづち)を貸して下さいと然(さ)う云つて借りて来い。


小「へえ……往つて参ゐりました。

旦「貸して呉(く)れたか。

「アノお隣で、何の釘(くぎ)を打つんだと申しますから、蚊帳の釣手を打つんですから鉄釘(かなくぎ)で御座いませうと申しましたら、鉄(かね)と
鉄との摺(す)れ合ひで金槌が減るから貸せないと申しました。

旦「ムーン然(さ)う吝嗇(けち)な奴だ……ぢやア宅(うち)のを出して使へ。