いちょうの木
庭の銀杏の木が、
昨日の強風で葉っぱを撒き散らしている。
「さあ、早くわたしの髪の毛を片付けておくれ」
銀杏の木は半世紀以上、
地盤が硬く根を深く張れない、
この日当たりの悪い庭に居座っている。
「家を守っているのさ」
水分の多い葉っぱは、地面にへばり付いて、
なかなか素直に掃かせてくれない。
数日そのままにして乾燥させなければ。
「ああ、目まったるい、早く掃いてしまうんだよ、
この野呂間!」
大お婆さんの植えた銀杏の木。
娘たちは無関心。
嫁は腰が難儀だが、履き清めるのが嫌いではない