ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

佐藤春夫

佐藤春夫『秋刀魚の歌』

flickr あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば伝へてよ ――男ありて 今日の夕餉(ゆうげ)に ひとり さんまを食(くら)ひて 思ひにふける と。 さんま、さんま そが上に青き蜜柑(みかん)の酸(す)をしたたらせて さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。 …

海辺の恋

今週のお題「海」 Face-2-Face こぼれ松葉をかきあつめ をとめのごとき君なりき、 こぼれ松葉に火をはなち わらべのごときわれなりき。 わらべとをとめよりそひぬ ただたまゆらの火をかこみ、 うれしくふたり手をとりぬ かひなきことをただ夢み、 入り日のな…

佐藤春夫『冬の日の幻想』

Lamorgans 霜ぐもる十二月の空は 干ものやくにほひにむせび 豆腐やのちゃるめら聞けば 火を吹いておこすこの男の目に ふと どこかの 見たこともない田舎町の場末の 古道具屋の四十女房がその孕(はら)みすがたで 釣ランプをともすのだ かかるゆふべの積み累…

海辺の恋

Face-2-Face こぼれ松葉をかきあつめ をとめのごとき君なりき、 こぼれ松葉に火をはなち わらべのごときわれなりき。 わらべとをとめよりそひぬ ただたまゆらの火をかこみ、 うれしくふたり手をとりぬ かひなきことをただ夢み、 入り日のなかに立つけぶり あ…