ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

国木田独歩

国木田独歩『小春』

写真 工藤隆蔵 一年の熱去り、 気は水のごとくに澄み、 天は鏡のごとくに 磨かれ、 光と陰といよいよ明らかにして、 いよいよ映照せらるる時 (ウィリアム・ワーズワース 訳 国木田独歩) パガニーニ 24のカプリース 今週のお題「秋の空気」

『老熟先生』国木田独歩

(かつて熱中したワーズワースの詩集を、すっかり忘れていた先生) …主人公の命運のために三行の涙をそそいだ自分はいつしかまた 彼を誘うた浮世の力に誘われたのだ。 そして今も今、いと誇り顔に「われは老熟せり」と自ら許している。 アア老熟! 別に不思…

武蔵野 三月

夜十一時。 屋外の風声をきく、 たちまち遠くたちまち近し。 春や襲いし、 冬や遁(の)がれし 写真 工藤隆蔵

武蔵野 一月

夜更けぬ。 風死し林黙す。 雪しきりに降る。 燈をかかげて戸外をうかがう、 降雪火影にきらめきて舞う。 ああ武蔵野沈黙す。 国木田独歩『武蔵野』 photo Lisa Plymell

武蔵野 十一月

月を蹈んで散歩す、青煙地を這い月光林に砕く photo Pannonius Rex

武蔵野の時雨の人なつかしく私語ささやくがごとき趣あり

photo mripp もしそれ時雨の音に至ってはこれほど幽寂のものはない。 山家の時雨は我国でも和歌の題にまでなっているが、 広い、広い、野末から野末へと林を越え、杜(もり)を越え、田を横ぎり、また林を越えて、 しのびやかに通り過ゆく時雨の音のいかにも…

武蔵野 国木田独歩

秋天ぬぐうがごとし、木葉火のごとくかがやく 写真 工藤隆蔵