工藤隆蔵 亡き川越の老母がまだ娘ざかりの頃、松雪庵という茶の師匠の内弟子として、あるところへ茶を立てに行った(という雪の夜の話はわたしの家に残っている)この師匠の前身は十年も諸国行脚の旅に送った尼僧であったそうだが、茶人として松雪庵を継いで…
この雪が来た晩の静かさ、戸の外はひっそりとして音一つしなかった。あれは降り積もるものに潜む静かさで、ただの静かさでもなかった。いきぐるしいほど乾き切ったこの町中へ生気をそそぎ入れるような静かさであった。にわかに北の障子も明るい。雪が来て部…
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