ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

『犬神家の一族』けん族物語 ホラーい〜わ〜

お題「ゆっくり見たい映画」

 

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市川崑監督の『犬神家の一族』(1976年)を観賞しました。

若い時分には、わからなかったんですが、
日本の文化風俗が美しく表現されていて、とても良かったです。
期待していなかったんですが、感銘をうけました。
歳ですかね〜。笑


さて、話は殺人事件です。

一代で巨万の富を築いた実業家、犬神佐兵衛。
(彼の出自は謎とされます)
その数奇な生と死。
遺産相続によって起こる親族間の欲が絡んだ争い、
そして事件…。

むかし観た時は、そういう印象でした。
今回もそこは同じなんですが、
ひとつ違う発見をしました。


これは眷属(けんぞく)物語ですね。
松子未亡人がこっそりと、
動物の絵のお札を拝むシーンがあります。
犬神佐兵衛は、野良犬のように行き倒れていたところを、

神官に保護されます。どこで生まれどう育ったのか、

一切明かされません。
犬神佐兵衛というのは、いったい何者なんでしょうか?



この話を家人(山登りだった)にしたところ

「そう言えば、山で犬神様を祀っている所ってあるな」



原作を読んだ方には自明の事実でしょうね。

横溝正史は映画では、ホラーな面、センセーショナルな扱いが
強調されますが、
原作は、科学的、民族学的、検証的で好きです。



この夏、読んでみようかなと思います。

夏ですからね。
皆さん、
ホラーですよー。

 

 

 

 

youtu.be

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モース警部『カインの娘たち』

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コリン・デクスター モース警部「カインの娘たち」大庭忠男訳
 
 

この作家、意外と女が書けるんですね〜。
期待してなかったんですが、収穫でした。


最近亡くなりましたね。

女性を描ける作家は、そういないと思っています。
書けていても、好みじゃなかったり。
それは女に生まれ一度死に、色々あって今度は男に生まれ変わって、

そうして作家になれば、それは〝女〟というものを、
一節ふた節書けることがあるでしょうが。

そういうこと(生まれ変わり)があればの話です。

『カインの娘たち』
女教師、掃除婦、娼婦。
この三人の描写がとても良いです。
これは保存版として、状態の良い物を買い求めねばと思っています。笑

話の筋はそれほど奇抜ではないので。
コアなミステリーファンには、
『オックスフォード運河の殺人』
『森を抜ける道』
『死者たちの礼拝』
こちらをお薦めします。

 



刑事モース~オックスフォード事件簿~ シーズン2 第2話 Case 7 亡霊の夜想曲 #GYAO

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケンジアン

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tv.rakuten.co.jp

ディケンズの物語の登場人物たちを、縦糸と横糸に配し、新たに紡ぎ出された創作世界。

19世紀の霧の都ロンドンに繰り広げられる、クライムサスペンスドラマ。

 

 


今朝は、当地はめずらしく霧が掛かっています。

改装して新しくなった赤字病院の高い棟も、
山を崩して造った忌まわしいマンションも
今は薄白く、水蒸気に覆われて見えています。

ついでにわたしのアタマにも…笑


霧といえば、
今夢中で読んでいる本。

 

 

 

 

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          ディケンズ クリスマスキャロル



 

www.aozora.gr.jp

 





ドラマの時代の霧の都ロンドンは、
石炭の排ガスと水蒸気が混じった、ドロドロの
体に悪そうな空気に覆われていたそうです。

感想文としてまとまったら、
そのうち記事にするかも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジキル博士とハイド氏』

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                    flicker

 

 

  

 

『人間は完全かつ本源的に二重性格のものであることを悟った…

 

自分が相争っている二つの性質のどちらかであると誤りなく言えるとしても、

 

それはもともとわたしがその二つを兼ね備えているからにすぎない』

 

ヘンリー・ジキルの陳述書より 

 

 

 

 
 
 
 
 

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原作は言わずと知れたスティーヴンソンの怪奇小説です。
 
 
待ち合わせ時間に早すぎ、時間つぶしに買った短編。
 
しかし、読んでみて驚きました。
 
ストーリーのエキセントリックさとは裏腹に、非常に名文です。
 
二十世紀中おそらく二十指に入る名文で認められた、傑作です。
 
 
 
 Halloween inspired
 
 
 
 
 

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バッハ トッカータとフーガ ニ短調 オルガン
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

『メアリー・ライリー』

今週のお題「映画鑑賞の秋」

ティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』の二次創作です。
 
ビクトリア朝の使用人のひとりの女性(ハウスメイド)。彼女の生い立ち、仕事。
とりわけマスター(ご主人様=ジキル博士)とのプラトニックな関係を書き綴った日記。
 
という設定のフィクションです。作者は現代人。ヴァレリー・マーティン女史。
 
 
当時はあまり教育を受ける機会もなかった(文字を読み書きできなかった)
と思われていた、被支配者階級の使用人が書き残した手記などは実在する。
19世紀の虚飾なきところの支配者階級の姿、それを支えていた使用人達の仕事、
風俗などを知る上で、貴重な資料であるとともに、読み物としても面白く、
(連ドラみたい)イギリスではその書籍化が、ベストセラーになっている。
 
 

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『Mary Reilly』
 
 
小説『メアリー・ライリー』の映画化。
この映画は、素晴らしい!
そして最低です。
 
ビクトリア朝の研究者シャーロキアンに言わせると
当時の労働者階級の生活、風俗が非常に上手く表現されているそうです。
 
役者もいい。ジョン・マルコヴィッチ、演技は下手だけどイノセントの表現者としてはJ.R.も良しとしましょう。そしてグレン・クローズ
(彼女の悪役は凄みがあり一級品、男性はゾッとするようですが。笑)
 
 

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なのに、駄作。
文芸作品としてまとめれば良いものを、中途半端なスプラッタホラーにしてしまった。
最後のCGなどいらぬ!役者の演技だけで十分だ。
 
素晴らしい再現性も台無しっ!
 
な、作品です。
 
駄作を甘受する懐の大きな方。素晴らしい素材の上に乗っかった、
素晴らしく趣味の悪い何がしかをご堪能ください。
これこそ悪夢と言わざるを得ない。
 
 
 
『Mary Reilly』(邦題 ジキル&ハイド)1996年。(英語)
グロい表現があります。ご自身の責任でご覧ください。
 
 
 
 
 
 

デュ・モーリア『東風』

今週のお題「わたしの自由研究」

 

隔絶した島。

純朴な人々。

簡素な暮らし。

 

そこに突然の東風。

東風が、アイツらを連れてきた。

欲望がさらけ出す。

肉と肉がダンスする。

 

ああ、東風が吹き、全てを暴き出し、

発狂させる。

 

 

 

小学生の時に、テレビでヒッチコックの『鳥』を初めて観ました。父の胡座の上で。

 

それから約半世紀。ようやく原作にありつきました。

『東風』は『鳥』と似たシチュエーションですが、

襲い来るのが生き物ではなく、風なのでした。

 

 

両作品とも、庶民の生活描写が秀逸です。

そしてライトなホラー。日常の中の非日常。

狂気。殺意。

そこに至る物語が、淀みなく簡潔に描き出されています。

 

 

 

 

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  『東風』の意味は、季節の変わり目に吹く風だそうです。

8月の末ごろから、東風や北東の風が吹くようになりました。

朝はそのおかげで、いくぶん過ごしやすく…。

 

しかしその冷たい風と、暖かい空気が、上空で喧嘩して

甚大な災害をもたらす。

この小説は、まさにその恐ろしい人害を描いているのでしょう。

 

 

 

 

 

 

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