『犬神家の一族』けん族物語 ホラーい〜わ〜
市川崑監督の『犬神家の一族』(1976年)を観賞しました。
若い時分には、わからなかったんですが、
日本の文化風俗が美しく表現されていて、とても良かったです。
期待していなかったんですが、感銘をうけました。
歳ですかね〜。笑
さて、話は殺人事件です。
一代で巨万の富を築いた実業家、犬神佐兵衛。
(彼の出自は謎とされます)
その数奇な生と死。
遺産相続によって起こる親族間の欲が絡んだ争い、
そして事件…。
むかし観た時は、そういう印象でした。
今回もそこは同じなんですが、
ひとつ違う発見をしました。
これは眷属(けんぞく)物語ですね。
松子未亡人がこっそりと、
動物の絵のお札を拝むシーンがあります。
犬神佐兵衛は、野良犬のように行き倒れていたところを、
神官に保護されます。どこで生まれどう育ったのか、
一切明かされません。
犬神佐兵衛というのは、いったい何者なんでしょうか?
この話を家人(山登りだった)にしたところ
「そう言えば、山で犬神様を祀っている所ってあるな」
原作を読んだ方には自明の事実でしょうね。
横溝正史は映画では、ホラーな面、センセーショナルな扱いが
強調されますが、
原作は、科学的、民族学的、検証的で好きです。
この夏、読んでみようかなと思います。
夏ですからね。
皆さん、
ホラーですよー。
笑
モース警部『カインの娘たち』
この作家、意外と女が書けるんですね〜。
期待してなかったんですが、収穫でした。
最近亡くなりましたね。
女性を描ける作家は、そういないと思っています。
書けていても、好みじゃなかったり。
それは女に生まれ一度死に、色々あって今度は男に生まれ変わって、
そうして作家になれば、それは〝女〟というものを、
一節ふた節書けることがあるでしょうが。
そういうこと(生まれ変わり)があればの話です。
『カインの娘たち』
女教師、掃除婦、娼婦。
この三人の描写がとても良いです。
これは保存版として、状態の良い物を買い求めねばと思っています。笑
話の筋はそれほど奇抜ではないので。
コアなミステリーファンには、
『オックスフォード運河の殺人』
『森を抜ける道』
『死者たちの礼拝』
こちらをお薦めします。
刑事モース~オックスフォード事件簿~ シーズン2 第2話 Case 7 亡霊の夜想曲 #GYAO
『ジキル博士とハイド氏』
『人間は完全かつ本源的に二重性格のものであることを悟った…
自分が相争っている二つの性質のどちらかであると誤りなく言えるとしても、
それはもともとわたしがその二つを兼ね備えているからにすぎない』
ヘンリー・ジキルの陳述書より
『メアリー・ライリー』
今週のお題「映画鑑賞の秋」
スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』の二次創作です。デュ・モーリア『東風』
今週のお題「わたしの自由研究」
隔絶した島。
純朴な人々。
簡素な暮らし。
そこに突然の東風。
東風が、アイツらを連れてきた。
欲望がさらけ出す。
肉と肉がダンスする。
ああ、東風が吹き、全てを暴き出し、
発狂させる。
小学生の時に、テレビでヒッチコックの『鳥』を初めて観ました。父の胡座の上で。
それから約半世紀。ようやく原作にありつきました。
『東風』は『鳥』と似たシチュエーションですが、
襲い来るのが生き物ではなく、風なのでした。
両作品とも、庶民の生活描写が秀逸です。
そしてライトなホラー。日常の中の非日常。
狂気。殺意。
そこに至る物語が、淀みなく簡潔に描き出されています。
『東風』の意味は、季節の変わり目に吹く風だそうです。
8月の末ごろから、東風や北東の風が吹くようになりました。
朝はそのおかげで、いくぶん過ごしやすく…。
しかしその冷たい風と、暖かい空気が、上空で喧嘩して
甚大な災害をもたらす。
この小説は、まさにその恐ろしい人害を描いているのでしょう。