デュ・モーリア『東風』
今週のお題「わたしの自由研究」
隔絶した島。
純朴な人々。
簡素な暮らし。
そこに突然の東風。
東風が、アイツらを連れてきた。
欲望がさらけ出す。
肉と肉がダンスする。
ああ、東風が吹き、全てを暴き出し、
発狂させる。
小学生の時に、テレビでヒッチコックの『鳥』を初めて観ました。父の胡座の上で。
それから約半世紀。ようやく原作にありつきました。
『東風』は『鳥』と似たシチュエーションですが、
襲い来るのが生き物ではなく、風なのでした。
両作品とも、庶民の生活描写が秀逸です。
そしてライトなホラー。日常の中の非日常。
狂気。殺意。
そこに至る物語が、淀みなく簡潔に描き出されています。
『東風』の意味は、季節の変わり目に吹く風だそうです。
8月の末ごろから、東風や北東の風が吹くようになりました。
朝はそのおかげで、いくぶん過ごしやすく…。
しかしその冷たい風と、暖かい空気が、上空で喧嘩して
甚大な災害をもたらす。
この小説は、まさにその恐ろしい人害を描いているのでしょう。