ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

デュ・モーリア『鳥』

突然鳥の大群が人を襲い出す。
ヒッチコックの映画『鳥』が有名ですが、
原作には、映画では触れられていなかった、なぜ鳥が急に狂ったか?
その理由が語られています。(務台夏子訳 創元推理文庫
 
冒頭、主人公が海鳥を観察するシーン。
 
主人公はいつも以上に、何かに駆られている鳥たちに気がつく。
「…彼らは大群となって半島に飛来し、落ち着きなく、不安げに動きまわり、
消耗していく。
空を駆けめぐり、旋回していたかと思うと、掘り返されたばかりの豊かな土に降りて餌をついばみ、
そうして食べているときですら空腹も食欲も感じていないようだ。
そして彼らは、ふたたび落ち着きなく空へと駆り立てられていく」
 
「彼ら(春の鳥)の生(繁殖)のリズムは遅れを許さない」
(しかし冬の鳥は)同じ衝動に駆り立てられながらも、それが成就することはなく、
「冬がもうじき来る。(渡りをしない)連中の多くが死ぬことになる。
ちょうど寿命が来る前から死を恐れる人間が、
懸命に働いたり愚行に走ったりするのと同じように、
連中もじっとしていられなくなるんだ」
 
そして冷たく乾いた東風と共に、突然訪れた黒い冬、盛り上がる潮流。
 
「やがて彼らもあの飛翔への衝動に捉えられ、叫び、鳴き、わめきながら…
急げ、もっと速く、さあ、行けーでもどこへ?なんのために」
 
 
 

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