ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

わが家の最強ボジョレー ヌーヴォーないち日

今週のお題「家で飲む」

 

「買ったから、買わないで」

 

ある日通勤前のねこじさんが言った。

「新ワイン、今年は出来がいいらしい」

家人もわたしもワイン党ではない。
だからワインのことは良く知らないし、ボジョレー ヌーヴォーを今まで買ったことはない。
というのも、二人ともワインに悪酔いする体質なのだ。飲酒の翌日は、一日中頭痛に苛まれる。
だからわが家の常備ワインは料理用の2L一番安い赤と白と決まっている。

「いらないよ」

言ったが、遅い。
会社の義理で二本も買ったという。
 
「二本も?」

しかも高い。
自分がワインを飲めないこともあり、常日頃、

「向こうじゃ水より安いらしいよ」

とうそぶき、草木もなびくワインブームをはすに眺めているねこじさんだが、
会社の命令で初購入と相成った。

夜。
帰ってきたねこじさん。

「一杯分だけは何とか確保した」

と、粉々になった瓶を差し出した。
驚き、口あんぐりの私を尻目に
 
「いや~、まいったまいった」

「自分がこうならなくて良かったよ」

聞けば、バイクで帰宅中のねこじさん、カーブを曲がるとき、勢い余ってハンドルにぶら下げていたワインの袋がすっぽ抜け、
グワッシャ~ン!
そのかけらを広い集めて帰って来たらしい。
奇跡的にその底の部分に残った、たった一杯分のボジョレー ヌーヴォー。
とりあえず、その貴重なワインを、ていねいに漉して二人でいただいた。

 
 

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「んまいっ!」

多分今まで飲んだワインの中で一番美味い。
我々にとって最も高くついたワインだからなのか、たった一杯を二人で分けあったからなのか、
バイクにぶら下げて振り回したのが良かったか、漉したのが良かったか
とにかくうまかった。
最強なのは、量が少ないので次の日の頭痛がなかったことだ。


「家飲みの思い出」 数年前のボジョレー ヌーヴォーにまつわるお話です。
 
 
 
(photo あけぼの