ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

小説『ブラジルのおばちゃん』3 みやびちゃん

雅ちゃんは頭が良くて学級委員で、スポーツも出来て、華やかで。

そして、私の何もかもが気に入らない。
 
勉強が苦手だが絵が上手。日々、同級生たちを笑わせることに心血を注ぎ、
人気だけはクラス一だった私を、心底憎んでいた。

 
何かと、感情的になって突っかかって来られたのを覚えている。
ふざけていると思われたらしい。

まあ、おふざけ者であったことは確かだ。
私は親を笑わせるために生まれて来た、とそのころは確信していた。

今からは想像もできないが、学校帰り、とても歩きにくかったのを覚えている。
というのは、右手に三人左手に二人と、同級生がぶら下がっていたからだ。

「ちいちゃんは面白いから、いっしょに帰ろう。」
 
という訳だ。
当然、真っすぐは帰れない。
あっちの同級生の家を通り、また、こっちの同級生の家を通りして、一人一人離して行くのだ。


「せんせい!」

雅ちゃんが学活の時間に手を挙げた。もう後数分で授業が終わるという時に、
担任が皆さん何かありますか、と聞いたのだ。

「決められた下校路を守らない人がいます。」

「上田さんです。」

私は突然法廷に引っ張り出された。
それまで、それが、してはいけないことだとは、全く思ってもいなかった。
どうもとんでもないことをしでかしたらしい。


ブラジルのおばちゃん、母、そして、雅ちゃんの関わりを、
この時、私は知る由もない。
 
 
 
 
(ブラジルのおばちゃん 3)