ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

ねこ裁判 蝉 一

ママはおばあちゃんのことをおっきい猫だと思っている。

『めすねこ』だ。

それには理由がある。

まだワタシが小さい時のこと。

おばあちゃんとママが、ワタシを乳母車に乗せて散歩した。

海沿いの、遊歩道の街路樹の下。

木ごとに、蝉がたわわに実っていて、

ビンビンけたたましく鳴いている。

「恋人募集中っ!」

「自分たちっ、もう、時間ありませんから!」

と、行く夏を惜しむというよりは、大いに焦り気味に見える。

その、はかない命の昆虫を

一匹また一匹、

バシっ!

バシっ!

と情け容赦なく捕まえていく猫が一匹。

じゃなくって、

おばあちゃんが一人。

「ほ~ら、○○ちゃん。蝉。」

どうやら、ワタシに見せたかったらしい。