ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

バックパッカーと首の皮一枚の私たち 五

インターコンチネンタルホテルに決めた。」

夫がそう言った時、

「えええ===?」

と思った。
バックパッカーと首の皮一枚のプライドはどこに?
しかし、夫は忙しい仕事の合間に、既に航空券&ホテルを別々に手配済み。
今さらワタシのプライドなど気づかう余裕も理由もない。

「もう二度と泊まれないと思うから。」

「コロニアル風のいいホテルだけど。」

「どえらく古いらしい。」


タイという国に初めて降り立った。

バンコクを初めて見た。

いささか不安になった。

空港ロビーで待ち構える、戦闘モード全開の白タク運転手たち。

みんな怒った顔をしている。

正規の送迎業者もいるのだが、やる気のないタイ人モードで、信頼できない。

両替にしたって、バーツが安い、安すぎる。

こんな相場で成り立つ大都会などあるのか?

香港の両替レートに慣れていた私たちは、

その、あまりにもいいレートに我が目を疑うというよりは、

アホらしささえ感じた。

『これは、なにかの罠だ。』

平和ボケし、コロニアル風を満喫しに来た日本人家族に、

なにか、キッツ~いワナを仕掛けようとしているに違いない。

私は本気でそう思っていた。