ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

『メグレとパリの通り魔』

お題「好きなシリーズもの」

 

 

 

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閉塞的で変化の乏しい職場環境。

単調な仕事、無意味に見える作業。

それでも社会のためになる…かもしれない。


クリスマスのパリ。雨氷が窓を凍らせる。

電話交換台に詰め、黙々と働く三人の男。

夜勤明けはもうすぐだ。


三人の男の一人。

とりわけ地味で、独身のルクールは、今日も仲間に交代を頼まれ、

休憩もそこそこに再び勤務につかねばならない。

点滅する豆電球を見ながら。

閉塞的で変化の乏しい職場環境。

単調な仕事、無意味に見える作業…。

 

しかし、そこに思いもかけない展開が。

 

彼の何気ないいつもの行動が、未解決事件に光を当て、

一躍刻の人になろうとは!


いや〜、良かった。


ジョルジュ・シムノンが、メグレ警視シリーズが大好きになったこの一作。

凍った心が暖かくなる作品です。

 

 

 

 

 

 

病院坂の首縊りの家

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お題「ゆっくり見たい映画」

 

朝晩に、ほんの少し気温の低下を感じられるようになりました。
皆さまには、寝冷えなどされておりませんでしょうか?


さてこの暑苦しい夏にぴったりの、
ホラー仕立てのミステリー映画を
観まくっていたわたくしです。

犬神家の一族』に始まって、
八つ墓村
『獄門島
悪魔の手毬唄
悪魔が来たりて笛を吹く
そして
病院坂の首縊りの家

などなど…。

しかし原作を読んだのは
わずかに二本。

犬神家の一族』と
病院坂の首縊りの家』(以下、『病院坂』)
のみです。

わけても『病院坂』は、若い時に読みまして、衝撃を受けたわけです。
その時感じたんですよね。
この作家(横溝正史)は、奇怪な事件を扱ってはいるが、
そこに至る物語を、淀みなく理論的に描くことができると。

そこで映画『病院坂』です。

あれっ?原作と違うじゃありませんか?
一番のエッセンスのところをチョンぎったー?!

 


〈以下 ネタバレ+R18+気分の悪くなる表現を含みます。自己責任でご覧ください〉

 


映画では、
首を切断され、病院の廃墟に吊るされた男、敏男と、
無理やり婚礼写真を撮られた大病院の娘、由香利。
二人の死因を、きちんと語っていませんでした。

 

原作ではこうです。

敏男はしがないバンドマン。
愛する女(小雪)と所帯を持とうにも先立つものがありません。
そこに目をつけた由香利。(邪悪な女)
結婚写真の仕返しに、敏男を金で買ったのでした。
由香利が敏男に要求したのはSMプレイ。
その過程で、由香利は憎い敏男を殺そうとします。
拷問され瀕死の敏男は、腿で由香利の首を絞め、
殺害するに至ります。自身も虫の息の中で、
小雪に自分の首を切り落とすことを命じるのでした。


奇怪でおぞましい事件に隠された真実。
こういう処を端折るから、つまらなくなる。
あくまでわたしの感想ですけどね。笑

 

 

 

 

 

 

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『犬神家の一族』けん族物語 ホラーい〜わ〜

お題「ゆっくり見たい映画」

 

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市川崑監督の『犬神家の一族』(1976年)を観賞しました。

若い時分には、わからなかったんですが、
日本の文化風俗が美しく表現されていて、とても良かったです。
期待していなかったんですが、感銘をうけました。
歳ですかね〜。笑


さて、話は殺人事件です。

一代で巨万の富を築いた実業家、犬神佐兵衛。
(彼の出自は謎とされます)
その数奇な生と死。
遺産相続によって起こる親族間の欲が絡んだ争い、
そして事件…。

むかし観た時は、そういう印象でした。
今回もそこは同じなんですが、
ひとつ違う発見をしました。


これは眷属(けんぞく)物語ですね。
松子未亡人がこっそりと、
動物の絵のお札を拝むシーンがあります。
犬神佐兵衛は、野良犬のように行き倒れていたところを、

神官に保護されます。どこで生まれどう育ったのか、

一切明かされません。
犬神佐兵衛というのは、いったい何者なんでしょうか?



この話を家人(山登りだった)にしたところ

「そう言えば、山で犬神様を祀っている所ってあるな」



原作を読んだ方には自明の事実でしょうね。

横溝正史は映画では、ホラーな面、センセーショナルな扱いが
強調されますが、
原作は、科学的、民族学的、検証的で好きです。



この夏、読んでみようかなと思います。

夏ですからね。
皆さん、
ホラーですよー。

 

 

 

 

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モース警部『カインの娘たち』

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コリン・デクスター モース警部「カインの娘たち」大庭忠男訳
 
 

この作家、意外と女が書けるんですね〜。
期待してなかったんですが、収穫でした。


最近亡くなりましたね。

女性を描ける作家は、そういないと思っています。
書けていても、好みじゃなかったり。
それは女に生まれ一度死に、色々あって今度は男に生まれ変わって、

そうして作家になれば、それは〝女〟というものを、
一節ふた節書けることがあるでしょうが。

そういうこと(生まれ変わり)があればの話です。

『カインの娘たち』
女教師、掃除婦、娼婦。
この三人の描写がとても良いです。
これは保存版として、状態の良い物を買い求めねばと思っています。笑

話の筋はそれほど奇抜ではないので。
コアなミステリーファンには、
『オックスフォード運河の殺人』
『森を抜ける道』
『死者たちの礼拝』
こちらをお薦めします。

 



刑事モース~オックスフォード事件簿~ シーズン2 第2話 Case 7 亡霊の夜想曲 #GYAO

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケンジアン

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tv.rakuten.co.jp

ディケンズの物語の登場人物たちを、縦糸と横糸に配し、新たに紡ぎ出された創作世界。

19世紀の霧の都ロンドンに繰り広げられる、クライムサスペンスドラマ。

 

 


今朝は、当地はめずらしく霧が掛かっています。

改装して新しくなった赤字病院の高い棟も、
山を崩して造った忌まわしいマンションも
今は薄白く、水蒸気に覆われて見えています。

ついでにわたしのアタマにも…笑


霧といえば、
今夢中で読んでいる本。

 

 

 

 

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          ディケンズ クリスマスキャロル



 

www.aozora.gr.jp

 





ドラマの時代の霧の都ロンドンは、
石炭の排ガスと水蒸気が混じった、ドロドロの
体に悪そうな空気に覆われていたそうです。

感想文としてまとまったら、
そのうち記事にするかも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジキル博士とハイド氏』

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                    flicker

 

 

  

 

『人間は完全かつ本源的に二重性格のものであることを悟った…

 

自分が相争っている二つの性質のどちらかであると誤りなく言えるとしても、

 

それはもともとわたしがその二つを兼ね備えているからにすぎない』

 

ヘンリー・ジキルの陳述書より 

 

 

 

 
 
 
 
 

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原作は言わずと知れたスティーヴンソンの怪奇小説です。
 
 
待ち合わせ時間に早すぎ、時間つぶしに買った短編。
 
しかし、読んでみて驚きました。
 
ストーリーのエキセントリックさとは裏腹に、非常に名文です。
 
二十世紀中おそらく二十指に入る名文で認められた、傑作です。
 
 
 
 Halloween inspired
 
 
 
 
 

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バッハ トッカータとフーガ ニ短調 オルガン