ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

小説『バクダンが消えた日』

Mちゃんはご近所の爆弾。

それもメガトン級、犬バクダンだ。


Mちゃんは町内会に入っていない。

『とっくの昔に町内会長と喧嘩している』

と、母が教えてくれた。
それもそのはず。家の周辺は家からはみ出したゴミだらけ。いわゆるゴミ屋敷。
そして、その家の中はと言うと、ゴミの中に、犬や猫が十数匹くらいいる、らしい。
施設から預かって来た可哀想な子たちだ。
そこだけ見れば、Mちゃんの行いは尊い
でもMちゃんは、その子たちを家に置いたまま、置きっ放し。もちろん餌やりはしている。
しかし、猫ならまだしも、犬を最近は散歩をさせたことがない。


Mちゃんは独身、一日中薬剤師の仕事で、犬を散歩させる暇も体力もない。

なのにまた、大型犬を預かって来た。
家の中はさすがに手狭なので、家の裏に大きな檻を作った。
しかし、散歩もさせず閉じ込めっぱなしなので、ストレスでワンワン吠えまくっている。

当然、犬の檻と近接している燐家のSさんから文句が出た。

「うるさい!」

「犬を何とかしろ!」

しかし、Mちゃんは

「うるさいね!」

とやり返すばかり。
おかげでわがご近所は、一触即発の険悪ぶりが日常だ。

そんなある深夜。
Mちゃんの犬が、その夜はやけにワンワンと吠え続けていた。


そして一夜明けて。
Sさんとご近所の人たちがMちゃんの家に集まって来た。
今日こそはガマン出来ない。

そして、一致団結して、Mちゃんの家の玄関まで行くと、そこには既に先客がいた。
警察官が一人、Mちゃんと話をしている。
母がMちゃんから話を聞いてきた。

「この辺を荒し回っているプロだって」
 
Sさんの家の塀によじ登った所を、犬が吠えたせいで逃げたんだって」
 
「ラッキーだったねー」

「お手柄お手柄!」



 
 
 
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(photo by Tambako the Jaguar )