小説『教習所にて 2』
「おい誰だよ!このヒトにハンドル握らせたの!」
七曲署ボス風の教官が叫んだ。
またやってしまった。
その日の路上教習の出来は全くひどかった。
前方にいるバスを追い越すことが出来ず、あたふたしているうちに、後続車がどんどん進路変更してダットのごとくトロい教習車を追い越していく。
中年の女は怖くて進路変更できない。ますます萎縮し、教官に叱られる。
バスが右折の合図を出した。
その日の路上教習の出来は全くひどかった。
前方にいるバスを追い越すことが出来ず、あたふたしているうちに、後続車がどんどん進路変更してダットのごとくトロい教習車を追い越していく。
中年の女は怖くて進路変更できない。ますます萎縮し、教官に叱られる。
バスが右折の合図を出した。
「もういい!ウィンカー消して!」
とうとうボスが諦めた。
『ず~っと、このままバスのうしろ走っちゃいけませんか?』
『むやみやたらと追い越しをしちゃいけないって、授業で教えてるくせに』
女は心の中で思った。
しかし実際の道路でこれが出来なくては、お話にならない。
「はいそこ右折して道なりね」
「はいそこ右折して道なりね」
『道なりって……このまま行くと……』
女の心臓がバクバクしてきた。
あの道路だ。
この地域きっての幹線道路、国道J6号線。そして女が正面衝突の悲惨な事故を見た場所だ。
頭がまっ白で何も考えられない。
あの道路だ。
この地域きっての幹線道路、国道J6号線。そして女が正面衝突の悲惨な事故を見た場所だ。
頭がまっ白で何も考えられない。
「あぶない!!!」
自転車が国道に飛び出してきた。
ボスが助手席からハンドルを右に切り、怒鳴った。
ボスが助手席からハンドルを右に切り、怒鳴った。
「危ないったら!」
もう少しで自転車に当たる所だった。
国道から左折して、旧道に入って行く。
女の心拍数が戻ってきた。
車は路肩に止まった。
女は泣きそうな顔で言った。
国道から左折して、旧道に入って行く。
女の心拍数が戻ってきた。
車は路肩に止まった。
女は泣きそうな顔で言った。
「ごわい……」
ボスが『人生最悪の日』という顔をして振り返った。
そのひたいにタラ~リと汗がにじんでいる。
そして、心と裏腹のことを言った。
そして、心と裏腹のことを言った。
( photo by 工藤隆蔵 )