「あんた一度だけイケメンにもてたことあるよね」
ムスメが幼稚園の時だ。
相手は季節外れに入園してきたイケメンである。
毎日のように手と手を取り合って
「『結婚する。』と言っているんですよ。」と。先生が心配するほどのラブラブぶり。
イケメンのお母さんも園でわたしを見つけると、
「家でも○○ちゃん○○ちゃんって、もう。」
あら、将来のご親戚かしら……。何てのんきに思っていたら……。
突然に、その蜜月は終わった。
彼の親もわたしを園で見かけても、話しかけてこなくなった。
最近急に思い出し、ムスメに聞いてみた。
「なんだったの?破局の原因は?」
「覚えてない。」
なに夢見てんの?的な態度。
「しかし、確かにこういうことが、たった一度だけあった。」
としつこく食い下がるわたし。
そうこうしているうちに、ムスメが幼稚園のアルバムを引っ張り出しめくり出した。
そして、おなかを抱えて笑い出した。
涙を流してヒ~ヒ~笑っている。
聞けば、その男の子のことを、
「かわいいかわいい」と言って愛でていたのを覚えているそうだ。
「それで、は・きょ・く・の・げ・ん・い・ん・は?」
ムスメ、ヘラヘラ笑いを止め、
「知らない。ある日突然『かわいくない』って言われた。」
バチンとアルバムを閉じた。
うあっ、ふられたんだ。その性格じゃね……。