ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

指輪物語「 The Lord of the Rings 」-Tolkien の邦訳 一

映画を初めて観た時、どうしても一つ腑に落ちないことがあり、
そのことを確かめたくて、
私はこの邦訳を読んでみた。
なんとなくそうなのか、ああそういうわけか、
と、分かってきた気にはなったのだが‥。
そうまでして私が知りたかったのは、

『なぜ、ゴラムを殺さなかったか』ということだ。

映画を観終わったときは、この忌まわしい生き物は、主人公の命の代わり、

『生け贄』

だったと思った。
指輪を葬ることは、どう見ても、主人公の愛すべきホビットの命と引き換え、
途中から、そんな不吉な予感とともに観ていたからだ。
原作を読んで、もっと別の肝心な意味に気が付いた。

『ゴラムがいなければ、指輪は滅ぼし得なかった。』

世界を救う、この主人公の任務自体、遂行することが出来なかった。
指輪に魅了され、毒され尽くし、自らの行為によって、墜ちるところまで墜ちたゴラム。
なんと、あの最悪な生き物が、全ての種族の恩人だというのだろうか。