ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

小説『梅雨の晴れ間』

彼女洗濯物を落とすぞ
 

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写真 工藤隆蔵
 
「あ」
思う間もなく、タオルを落とした。
ベランダのコンクリに。
「またやった」
どうしてこう不器用なんだろう。
いつもこのタイミングで、洗濯したものを落っことす。
(いつもこのタイミングで男が逃げていく)

落っことすって、分かっていたの。
でもスルリと手からすべり落ちた。

「また洗い直さなきゃ」
「梅雨で乾きにくいのに」
(男はなぜ逃げた?)

「尽くしたのに」
「男のプライドがどうこう言ってた…」
「男を立てないよねって」
「それで若いコもらうワケだ」
「一回り下は言うこと聞くと思ったら大まちがい、歳とったらどーよ?」
「そのコから見たら、高齢者だから」
「若いってことは、殺傷能力ありってことだから」
「そんなニュースばっかだから!」
 
 
(ほかさがせ)
「他探そ」