ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

高村光太郎『冬の朝のめざめ』

イメージ 1
faungg's photos






冬の朝なれば街(ちまた)より

つつましくからころと下駄の音も響くなり

大きなる自然こそはわが全身の所有なれ

しづかに運る天行のごとく

われも歩む可し

するどきモツカの香りは

よみがへりたる精霊の如く眼をみはり

いづこよりか室の内にしのび入る

われは此の時

むしろ数理学者の冷静をもて

世人の形(かたち)づくる社会の波動にあやしき因律のめぐるを知る






モツカ=木瓜 ぼけの花。冬に咲く寒ぼけのことか。







イメージ 2
Hidetsugu Tonomura