高村光太郎『冬の朝のめざめ』
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冬の朝なれば街(ちまた)より
つつましくからころと下駄の音も響くなり
大きなる自然こそはわが全身の所有なれ
しづかに運る天行のごとく
われも歩む可し
するどきモツカの香りは
よみがへりたる精霊の如く眼をみはり
いづこよりか室の内にしのび入る
われは此の時
むしろ数理学者の冷静をもて
世人の形(かたち)づくる社会の波動にあやしき因律のめぐるを知る
モツカ=木瓜 ぼけの花。冬に咲く寒ぼけのことか。
Hidetsugu Tonomura