ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

『あれが阿多多羅山』

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あの光るのが阿武隈川


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ここはあなたの生れたふるさと、

あの小さな白壁の点点があなたのうちのぐら。

それでは足をのびのびと投げ出して、

このがらんと晴れ渡つた北国の木の香に満ちた空気を吸はう。

あなたそのもののやうなこのひいやりと快い、

すんなりと弾力ある雰囲気に肌を洗はう。

私は又あした遠く去る、

あの無頼の都、混沌たる愛憎の渦の中へ、

私の恐れる、しかも執着深いあの人間喜劇のただ中へ。

ここはあなたの生れたふるさと、

この不思議な別箇の肉身を生んだ天地。

まだ松風が吹いてゐます、

もう一度この冬のはじめの物寂しいパノラマの地理を教へて下さい。


あれが阿多多羅山、

あの光るのが阿武隈川








『樹下の二人』高村光太郎 智恵子抄 編集あり 
                                            写真 安達太良山 Chuusan777








安達太良山 (あだたらやま)は福島県中部にある活火山である。日本百名山新日本百名山花の百名山およびうつくしま百名山に選定されている。

阿武隈川 (あぶくまがわ)は、福島県および宮城県を流れる阿武隈川水系の本流で、一級河川[1]である。水系としての流路延長239kmは、東北で北上川に次ぐ長さの川である。