ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

長崎 美しき残骸

 
イメージ 1

 




もし西欧世界に何かを発信できるとすれば、

それは、ただ二つのうちの、もう一つではなく、

この長崎を置いてないだろうと思います。

爆心地を訪れた時、そう確信しました。


浦上天主堂の外壁。

焼け崩れた異国の赤い煉瓦の一つ一つ。

そして天使や聖人たちの残骸。


この痛ましき至上の美の前には、あらゆる言葉は色を失うのだ。

ただ、祈りの言葉をのぞいては。





イメージ 2




咎なき者に咎を与え


天はその矛盾に悶絶した


もはや一秒も逆行し得ないことに


七転八倒の苦しみを覚え


時間を永遠に止めた


その光景に目がつぶれ


あらゆる色彩を奪い去り


二度とよみがえらせないと決めた


鳥は喜びの詩を決して歌わないように


ただの獣に替えはずかしめた
 





(数年前に長崎を訪れた時に書いた詩です。
西欧諸国の人々が一人でも多く、この長崎の地を訪れることを願って止みません。
  写真 Kazuya Inoh)