『夏の日の夢』小泉八雲
今週のお題「海」
『19世紀のあらゆる罪悪』
その一端を背負った一人の西欧人。
そして餌食たる
東の果ての島国の
西の果ての地。
天草の海は青い。
みんな青色だ。
夢のようだ。
ああ、これはきっと夢だ。
(酷暑に耐え切れず)長崎から逃げ帰ったラフカディオ•ハーンは、
船で三角港まで行き着き。
『浦島屋』と言う名の西洋風の旅館に一夜の宿を取る。
浮世絵から抜け出たような、美しい女将とのやりとり。
そして次の日、
炎天の中、陸路海岸沿いを、熊本まで人力車を走らせる。
ハーンは車中、神(乙姫は龍神の娘)によって惑わされ、神を疑い、しくじった、
哀れな青年『浦島太郎』に思いを馳せる。
しかし……。
『神によって惑わせられていない者などいるのか?』
『惑いのない人生などあるのか』
『わたしたちは、まさしく最も良い時期に、全く満足がいくように、
死ぬことを許されていないのだ』
炎天下の井戸水。
雨乞いの太鼓の音。
神を呼び覚ます音。
この紀行文は、炎天のころに読む掌編としてはうってつけ。お勧めです。
(THE DREAM OF A SUMMER DAY Lafcadio Hearn 林田清明 訳 青空文庫に収録