ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

架空の街 香港マニアック熱 番外編

私の父は、架空の街で生まれた。

街というより、架空の国だ。

戦前あったという、外地。

そこにあったという、小さな日本人町

今はもうない。

中国ではない。

北方の、凍てついた大地と豊かな海の恵み。

たくさんの人種。

そして、支配する者の少ない自由な気風。

そんな感じだったのだろうか?

私の架空の街への思慕は父の遺伝だ。

生前父は、日本の国に複雑な思いを抱いていたようだが、詳しくは語らなかった。

亡くなった時、私は真っ先に、その地に散骨することを考えたが、

治安も悪く、言葉も通じないとあっては、さすがに無鉄砲な私も断念せざるを得なかった。

私がおばあさんになるまでに、なんとか其の地を訪れたいものだと思っている。

しかし、その時、そこにその国はまだ、あるのだろうか?

なにしろ、架空の街なのだから。