ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

小津安二郎

『新らしき年の春』小津安二郎

halfrain 信濃の山近き雪ふかぶかとしたる宿の炬燵にうつらうつらと新らしき年の春を迎ふ陽の光障子に明るう雪どけの音かすかなりわが心すずろに ひねもすは永くちんちんと鉄瓶の湯はたぎりて安倍川の濁りし湯をなつかしむ地酒いとつめとう またたのしくもあ…

終秋

Bastetia 秋雨にほどよくさめし番茶かな 小津安二郎全日記

なべ

たてきりし硝子障子や鮟鱇鍋 sasaki0124 小津安二郎全日記

月なかバ

過ぎし夜業やあみだくじ 小津安二郎 全日記 Takashi Hososhima 徹夜で延々とフィルムをカットし続ける、根気のいる編集作業です。 おそらくこんな様子だったろうと思います。 https://www.t-kougei.ac.jp/blog/imaging/2015/07/23/895/

爪剪

d’n’c 爪剪や畳にとぼる髪の丈 (小津安二郎全日記)

燈下秋冷酒によし

*Light Painting* 乱さざるも酩酊その前後を弁ぜず 小津安二郎全日記

さんま

Bong Grit 『秋刀魚の腹にがく、秋冷とみに加はる』 小津安二郎全日記

酔余

工藤隆蔵 酔余 築地をあるく 雨気をはらむ空に新月ほそくかゝる 『小津安二郎全日記』

『楠木正成』

今の世の中に楠正成がゐても〈七度生れかはって〉と云ふに違いない然し〈朝敵を滅さん〉とは云ふまい〈金持ちになりたい〉と云ふだらうことによると七度生まれかはつた正成の変身は矢張〈七度生まれかはつて〉 の希望を継続して 丸びるの或る商事会社の会計…

『小津安二郎全日記』

My younger sister is three years younger than you 〈私の妹ハ三つであなたより若い〉と訳した 中学一年生 省線の中で僕のとなりに座ってゐる 小津安二郎は短い間ですが、子どもたちを教えた経験があるようです。 映画の中でも、教師役がまま登場しますが…

『父ありき』小津安二郎

Andrea Schaffer 四月四日密葬 砂町火葬場に行く父の世にあるもの一握の灰なり本通夜 〈メモ〉高野山の南院の庭先には今をさかりに牡丹が咲いてゐた半ばを過ぎた紀の国の五月の山山には ところどころ色褪せた八重桜がのこってゐて 新緑未だ来らず 夕陽まこと…

『人物画』

神谷町の古道具屋に行く 麗人が煙草を吸ってゐる 何となく侘しく 何となくはしたなく これはうら淋しい百号の人物画だ 『小津安二郎 全日記』

『丸之内点景』小津安二郎

▽ 相似形的二重露出 曇天の、丸ビルは大きな水さうに似てゐる。 中に、無数の目高が泳いでゐる。 ▽ 丸ビルは、とても大きい愚鈍な顔をしてゐる。 殊に、夜が明けてから、朝のラツシユ・アワーになる迄の数時間の表情と来ては、早発性痴ほうよだれだ。よだれ…

小津安二郎『ここが楢山』

母は明治八年生れ。三男二女をもうけて、僕はその二男に当る。他の兄妹は、それぞれ嫁をもらい、嫁にゆき、残った母と僕との生活が始まってもう二十年以上になる。 一人者の僕の処が居心地がいいのか、まだまだ僕から目が放せないのか、それは分らないが、と…