ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

『雪国の春』柳田国男

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 身勝手な願いと言われるかもしれぬが、私は暖かい南の方の、ちっとも雪国でない地方の人たちに、この本を読んでもらいたいのである。


当節は誰でも自分の郷土の問題に執心して、世間がわが地方をどう思うかに興味を引かれるのみならず、よそもおおよそこの通りと推断して、それなら人の事まで考えるにも及ばぬと、きめているのだからいたしかたがない。


この風がすっかり改まらぬかぎり、国の結合は機械的で、
知らぬ異国の穿鑿(せんさく)ばかりが、先に立つことは免れがたい。
私が北と南と日本の両端のこれだけまでちがった生活を、二つ並べて
みようとする動機は、その故に決して個人の物ずきではないのである。






(写真 東北本線 船岡~大河原  かがみ~)