ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

小説『むしょうの愛』

みなこは、恋多き女

この前イタズラに、今まで愛した男の数を数えてみようかと思った。

だが、とても手と足の指では、足りない。
デスクの鉛筆たての中に放り込んだままの筆記具を、片っ端から
数えたが、まだ足りない。

『あら、こんなに多かった?……』と思いつつ、

化粧ブラシの数を途中まで数えていて、バカらしくなってやめた。


みなこは美人でアタマが良い。モデルをやっていたこともある。
今はとある劇場勤めをして、キャリアを積んでいる。
そんじょそこらのオトコとカンタンに結婚しようとは思わない。


そんなみなこがホンキの恋をした。
お相手は、公家のぼんぼん…、
ではなくて、京都出身のお坊ちゃん、直樹。

痩せて弱々しいところに、みなこはむしょうに惹かれた。
たまに京都弁が出るところに、むしょうに惹かれた。
ご飯をボロボロこぼすところも、むしょうに惹かれた。

でも直樹の収入ではやっていけない。



昼下がり、みなこのアパートメント。
みなこと彼が、寝転がってテレビを観ている。
彼のほうが、テレビに近い。
リモコンの電池はとっくに切れている。

みなこは、チャンネルを変えてほしい時、彼の肩をちょんちょんと叩く。
直樹は足を伸ばして、足の指でチャンネルを変える。

さくさく番組を進行させるレポーターが映る。

また、みなこは、チャンネルを変えてほしくて、ちょんちょん。
彼が足でチャンネルを変える。

時代劇。

また、みなこがちょんちょん。
直樹が足。

ちょんちょん。
足。

ちょんちょん。
足。
 
 


 
 
無精の
愛…。
 
 
 
 
イメージ 1
Angelo Gonz?lez