バックパッカーと首の皮一枚の私たち 九
喧噪と煩悩の街バンコク
この街のど真ん中に、歴史に支えられた静寂の世界があることを誰が知ろう。
王宮庭園の中にあるせいか、
まるで結界に守られているように、ひっそりと
灼熱の空気を忘れたような涼感さえ感じる。
車が停まると、ベルが早速荷物を奪い合おうと、群れてくる。
車が停まると、ベルが早速荷物を奪い合おうと、群れてくる。
しかし、彼らの服装は、今まで見たベルたちとはまったく違っていた。
腰巻きのようなズボンのような……、
これが、タイ人の細腰にまとわりついて、何とも色っぽい。
腰巻きのようなズボンのような……、
これが、タイ人の細腰にまとわりついて、何とも色っぽい。
しかし目は真剣だ。
身のこなしも敏捷で美しい。
ここでお客の荷物をゲットすれば、部屋まで運び込み、チップをもらえるのだ。
物価の安い国タイでは、この外国人宿泊客の落とす数百円のチップで、飲食代くら
いは稼げる。
灼熱の国に迷いこみ、その国の男性に恋をする、日本人の若い女性はここを勘違
灼熱の国に迷いこみ、その国の男性に恋をする、日本人の若い女性はここを勘違
いしているのでは……、と思う。
つまり、
彼らの真剣な振る舞い、浅黒い肌、お素敵な情熱的な目。それは取りも直さず、
稼ぎのためで、
彼らから見れば、日本人旅行者などは、
カモがネギをしょい、鍋までかぶっている I`m ready の状態。
投げかける視線も、自然熱くなるというものだ。