ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

バックパッカーと首の皮一枚の私たち 八

ねむたい頭をふと起こすと
車はいつのまにか市街地の込み入った場所へと入っていった。
これから数日間を過ごす都市。
都会のむき出しのコンクリがしらじらとわれわれを迎える。
路肩にゴミが吹き溜まっている。何だかわからない果物の皮も捨ててある。
その中に、よく見ると犬もいるしお乞食さんもいる。

「こんな街愛することができない」

東南アジアの街の第一印象は、いつも同じだ。
現役時代宝石を商い、東南アジアを仕事で訪れていた義父が、苦々しい顔でよく言ったものだ。

「アジアは人の値段が安い」
(人の命が軽んじられている。という意味)

そして、引退後は二度とアジアの国に行きたがらなかった。
さもありなん。

そんなことを思い出していた。
と、
気が付くと、車は彫り模様のある瀟洒な土塀に並走している。
そして、開けた場所へと、突然すべりこんだ。
そこが、インターコンティネンタルホテル・バンコクのエントランスだった。

歩道1本隔てた街の喧噪を忘れたような、静かな空気がわれわれを迎えてくれた。




(文章中の失礼な表現をお許し下さい。個人の感想です)