ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

刑事コロンボ 推理の死角

第二話 『死者の身代金』 女は起訴されない?


ラストシーン。

空港のカフェ。

夫を謀殺した女。

口止め料として娘に払ったはずの身代金。

本当なら、犯人の手に渡っているはずのお金。

逆に証拠として目の前に提示されてしまう。

女のアタッシュケースに鎮座したそれは、まさに動かぬ証拠。

「ラッキーな人ね‥、いいえ違う。頭が切れるのよ。」

女は刑事を賞賛する。

「あなたもね。」

刑事が‘手強かった’という感じでこう言う。


しかし、この後、下町のロス市警の取調室に連れて行かれた女が、

こう言ったらどうだろうか。

「自分はあの時、飛行機から身代金を投げ落とさなかった。」

「あの瞬間、お金が惜しくなって、ネコババしたのだ。」

「身代金は、ずっと私が隠し持っていた。」

「そのことで、良心の呵責は感じるが、殺人とは無関係だ。」

と。

まさしく、

刑事が最後に言った犯人を評した言葉。

「あなたもね。」

の通りに。

この女は罪の裁きの場から、退散することができるのだ。




(このドラマを愛し、道徳的なことはさておき、筋立ての面白さだけで、感想を書きました。)