ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

穢國に住む 3

 

家の前にはベンチがあります。
うちが置いたわけではありません。
置きっぱなしなので、昼はバスを待つお年寄り。夜は、
「寝てる人がいたよ」とこの間ムスメが言っていました。

活用される憩いの場は、ついでに置き土産をされます。
タバコの吸い殻。ビールや酎ハイの空き缶。弁当の食べ終わった容器。etc…

ここ最近、毎日缶コーヒーとタバコの吸い殻が置いていかれるようになりました。

同じ場所、同じ銘柄、同じ人のようです。

今朝、ゴミを出して、家の周りの掃除をしていますと、ベンチにおじさんが座っています。
缶コーヒーを飲んでいるようです。
掃除をしながら、何となく近寄っていきました。

ホームレスか?朝まで肉体労働をしていたのか?ひとり暮らしなのか、着るものに構わない様子です。
声をかけます。

「お父さんいつもここに座ってる?」

「うん」

「缶コーヒー飲んでる?」

「うん、そう」

特に悪びれない様子。

わたしは雑巾でベンチを拭き始めました。

「お掃除のおばさん?」

「そんな感じ」

おじさんは、麦わら帽子に麻のシャツ、首にタオルのわたしを見て、こう判断したようです。
(着る物に構わない)と思ったかも知れません。

 

「お父さん、缶コーヒーはあそこのゴミ箱に捨ててくれませんか?」

「どこにあんの?」

数メートル先にあるゴミ箱を指さしました。
おじさんは、よっこらしょっと立ち上がり、缶コーヒーを捨てに行きました。

話してみて分かったのは、

「ゴミ箱が無いからここに置いていくんだ」
と言うおじさんの思念です。
まあ確かにそれはそうでしょう。
でも、ゴミ箱は置けませんよ。
ゴミだらけにされますから。笑

 

 

 

 

Yasunari Nakamura