ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

鎌倉日記 白昼現れた佐助の牝ギツネ

こ慣れた人ならば、この時期ここへは来ない。
 
しかし、うかつなことに私は、つい北鎌倉で降りてしまった。
 
案の定、ホームに降りたら人波で身動きもできない。

仕方がないので、円覚寺とは反対側へと改札を出た。

明月院側より、随分と静かだが、観光客を見かける。

こんな時期に来てしまった‥、と、自分を叱責しながら、

なるべく、人のいない方向を探し歩く。
 
 
 
 
 

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Kazuya Inoh
 
 
 
そうこうするうち、閑静な切り通しへと迷い込む。

暑い日差しの日だったが、ここはひんやりとしている。

人影はまばらだ。

期待していなかったが、紫陽花も自生している。

いいかんじだ。


そのまま歩を進めると、静かな住宅街へと道は続いていた。

曲がりくねった細い道を、あてもなく歩いていると、

銭洗弁天』の看板が。

「そうだ!母のために万札を洗おう」

遺族年金で、つましく生活する身となった母を喜ばせようと、

私の逍遥は、がぜん、現実的な使命と目的を帯びだした。