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『夏目漱石の伊予へ之くを送る』監修 雁来紅

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旧新橋駅
 
 
 
 
原文

夏目漱石之伊予 正岡子規

去矣三千里
送君生暮寒
空中懸大岳
海末起長瀾
僻地交遊少
狡児教化難
清明期再会
莫後晩花残


書き下し文

去(ゆ)けよ三千里
君を送れば暮寒(ぼかん)生(しょう)ず
空中(くうちゅう)に大岳(たいがく)懸(か)かり
海末(かいばつ)に長瀾(ちょうらん)起こる
僻地(へきち)交遊(こうゆう)少なく
狡児(こうじ)教化(きょうか)難(かた)し
清明(せいめい) 再会(さいかい)を期(き)す
後(おく)るる莫(な)かれ晩花(ばんか)の残(そこな)はるるに


意訳

行きたまえ遠く三千里の彼方へ

君を送れば寒さも身に沁む

途中富士の威容を見ることができるだろう

海には大渦が巻くだろう

田舎は遊びも少なく

餓鬼どもは言うことを聞かんぞ

清明節にはまた会おう

花のある間に遅れずに戻りたまえ



かっこいい漢詩です。
ただ、格好良いだけではなく、
正岡子規の人となりが現れています。
この子規の友愛と人間味のこもった温かい歌に対し、
漱石の返歌は如何に?
小説『坊ちゃん』がその返しに当たるのでしょうね。



清明

春分から数えて五番目の季節の節目。四月五日ごろ。
万物が清々しく明るく美しい、花見の時節。
 
 
 
 
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工藤隆蔵
 
 
 
 
 
 
 
雁来紅さんに監修してもらいました。
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