幼いころ、わたしはこう呼ばれていたらしい。
大人達は、なにも分からないと思って無茶を言う。
どうも昔の力士で、おでこがせり出していたらしい。
わたしも見たことはない。
姉に比べて、器量の劣るわたしを大人達はそう呼んで愛しんだ。
「ひなよひな。」
「ひなのおでこはわか
ちちぶ。」
「みんながそこで雨やどり。」
「ひなはお鼻をどこに忘れてきた?」
と、私の鼻をつまんだらしい。
それが功を奏してか。
「二十歳の五日まで待ってみな、この娘のほうが器量良し。」
そう予言した人はたった一人だったと、今でも母が不思議がる。
「ひな」 我が地方の方言で幼い女の子のこと