ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

わかちちぶ

幼いころ、わたしはこう呼ばれていたらしい。

大人達は、なにも分からないと思って無茶を言う。

どうも昔の力士で、おでこがせり出していたらしい。

わたしも見たことはない。

姉に比べて、器量の劣るわたしを大人達はそう呼んで愛しんだ。


「ひなよひな。」


「ひなのおでこはわかちちぶ。」


「みんながそこで雨やどり。」


「ひなはお鼻をどこに忘れてきた?」


と、私の鼻をつまんだらしい。

それが功を奏してか。   


「二十歳の五日まで待ってみな、この娘のほうが器量良し。」


そう予言した人はたった一人だったと、今でも母が不思議がる。




「ひな」   我が地方の方言で幼い女の子のこと