ookumanekoのブログ

言葉を味わう 文学の楽しみ

ホームズ狂

ホームズ好きだった父が亡くなった。
子どもの頃私は、その父の影響でホームズを読み、実在の人物だと思い込んだ。
到底ウソなどつきそうにないキャラのワトソン医師が、友人の仕事を記録するという小説の手法だが。
それが、フィクションでありながら、奇妙に現実味があり、子どもの私はすっかり騙されてしまった。
しかも、実際に、探偵が住んでいた場所が今でもロンドンにちゃんとあるというのだから。
「だって、ベーカー街は本当にある通りなんでしょう?」
そう言う私に父は微笑んだものだった。
私が父に反抗し始めるより遥か昔のことだ。
その反抗心は、不幸なことに父の死の直前まで続いた。
そういう訳で、私は父を連想させるホームズを長年封印していたのだ。
父の死によって封印は解かれた。
私は自身のホームズ狂を再確認すべく、また、改めて読んでみた。